虫歯治療

虫歯とは、歯の表面についた歯垢(プラーク)に、虫歯をつくるミュータンス菌やラクトバチラス菌が棲みつき、糖分を栄養にして酸を出し、歯の表面の硬いエナメル質を溶かされた状態というのは、皆さんよくご存知のことだと思います。
では、なぜ虫歯になってしまったのか、このことをきちんと考えたことはありますか?
残念なことに虫歯の治療で来院される患者さんのほとんどが、「痛くなったからひとまず治療をしよう」と考えている方だと感じています。
一度虫歯になってしまった歯は、そのまま放置しておいても自然に元の状態に戻ることはありません。治療を受け、それ以上虫歯が進行しないようにするしか歯を守る方法はないのです。
いくら虫歯を治療して痛くなったところが治っても、なぜ虫歯になったのかという根本的な原因を知らなければ、また虫歯になってしまって痛い思いをすることになり、せっかく治療した歯がダメになってしまって歯を抜かなければいけなくなることもあります。
なぜ虫歯になってしまったのかを理解するところから、虫歯の治療は始まります。
虫歯になるメカニズム
虫歯の原因として有名なミュータンス菌は、お口の中に元々存在している菌ではありません。虫歯とは、赤ちゃんの頃に周囲の人が使用したお箸やスプーンについた唾液を通じて、ミュータンス菌などの虫歯の原因菌が感染し、お口の中に菌が棲みついてしまう感染症なのです。

お口の中がミュータンス菌に感染すると、歯磨きをしたくらいでは菌量を減らすことはできませんが、人の身体にもミュータンス菌の出す酸と闘おうとする抵抗力があります。それが唾液や歯の質です。
私たちのお口の中は、食べたり飲んだりすると数分で酸性になり、歯の表面の成分が溶かされ始めます。それに対してややアルカリ性の唾液が分泌されることで、40分くらい時間がたつと「再石灰化」といって、溶かされた歯の成分がもとにもどります。
再石灰化のスピードに間に合わないくらいに、お口の中が酸性になる状態が長いと、虫歯になるリスクは高くなっていきます。
虫歯になりやすい人、なりにくい人

健康的なお口の状態を維持するために、虫歯予防でブラッシングをするというのは広く知られたことですが、毎日歯みがきをしているのに虫歯になってしまったという方もいらっしゃると思います。
正しくブラッシングできていないというケースも多々ありますが、それ以外にも、お口の中の環境を悪化させる要因があることが多いです。
食事の習慣
食事回数の多い人や、のど飴などを常用している人、甘い飲み物を常に飲んでいるという人は、虫歯菌に常に餌を与えている状態になるので、お口の中が酸性になる頻度が高く虫歯になるリスクが高いです。
口腔内の環境
唾液の分泌量が少ない人は、唾液による自浄作用が低下しているため、お口の中が酸性になる頻度が高く虫歯になるリスクが高いです。また、口呼吸が多いという人も、お口の中が乾燥しやすく虫歯になるリスクが高いです。
歯並びの状態
歯並びが悪いという人はブラッシングをしっかりしても歯垢(プラーク)が残ってしまうことが多いので虫歯になるリスクは高く、噛み合わせが悪いという人や歯ぎしりが強いという人も、虫歯になるリスクは高くなります。
同じように歯磨きしていても虫歯になりやすい人とそうでない人がいるというのは、きちんと歯みがきが出来ていない以外にはそういったことが理由になります。
メンテナンスの習慣を身につけましょう

一度治療したあとは虫歯にならないことが一番ですが、それにはなぜ虫歯になってしまったのかということを理解した上で、同じことを繰り返さないようにすることが大切です。
そのためには虫歯になりにくい食生活や、正しいブラッシングによるセルフケアといった予防習慣を身につける必要があると考えています。
セルフケアには限界がありますので、毎日の正しいブラッシングで歯垢を取り除き、セルフケアではとれない部分は定期的に歯医者に通って取り除くというメンテナンスの習慣を身につけることが、再び虫歯にならないために重要なことになります。